憂鬱Lamento
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さようなら
私と彼女の話
今日未明15年もの歳月を共に過ごした愛犬が静かに息を引き取ったと
父から電話があった
そんな日が来るだろう事は分かっていたつもりだった
今日は彼女のことを少し書いていきたいと思う
彼女の名前はチャッピー
15年前の勤労感謝の日に父に連れて行って貰ったつ〇ばわんわんラ〇ドで
ずうずうしくも飼育員のお姉さんに「只で貰えるわんちゃん居ませんか」と聞いたところ
狭いケージに入れられた彼女を紹介してくれた
耳の垂れた真っ白い可愛い子犬だった
私が訪れる3日前に駐車場に捨てられていたそうだ
あと一日飼い主候補が現れなかったら保健所に連れて行く予定だったそうだ
即日連れて帰る事を決め車に乗せた時
初めて会ったにも関わらず安心したように膝の上で眠ったのが印象的だった
やたらと利かん坊で手の掛かる子だったが頭のいい子だった
犬のくせに鼻も肉球もピンク色で変わった色だった
嫉妬心が強すぎて学校帰りにいつも触って帰る近所の犬に道でバッタリ遭遇した時
襲い掛かったのには肝が冷えた
普段他の犬にはそんな事しなかったのにな
菓子折りもって謝りに行ったのを今でも覚えてるよ
小さい頃は良く脱走もしたな
裏の使っていない畑を走り回って腹が減ったら玄関に帰ってきてた
ウッドデッキの柵を何度も改良したりして
アレは犬と人間の知恵比べだった
日向ぼっこが好きだった
引っ越してからは良く2階のベランダに連れて行った
私はのんびり煙草をふかして
お前はつかず離れずの距離に座って私を眺めてた
山川海色んな所に連れて行った
海に連れて行ったとき砂浜が暑くて片足ずつ上げてぴょこぴょこしてたのが
最高に面白かった
パラソルとシートを敷いたら真っ先に乗って日陰に入ってたな
普段お前に冷たい親父がお前に日陰を譲って
脛だけ真っ赤に日焼けしたのを見て何故か凄く安心したのを覚えてる
喜ぶとくりくりの目をキラキラさせて耳を伏せた
尻尾を回る程振ってヘリコプターみたいに尻から飛ぶんじゃないかと思ってた
おやつをあげるとき「よし!・・・いくぞう」とか「よっ!・・・こいしょ」とか
フェイントをかけると焦れたように頭をねじるのが可愛かった
頭を撫でながら反対の手を鼻先に持っていくと
撫でている手と同じテンポで手のひらを舐めた
あの柔らかい感触が好きだった
私が家を出ていく前日も同じ事をした
家に未練は無かったがお前を置いて行かなければならないことが
唯一の心残りだった
私が出て行ってから見るからに元気を無くしたと親父から聞いたよ
本当にごめんな
もっと会いに行ってやれば良かった
毎日毎日お前に話しかけてたもんな
急に話し相手が居なくなったんだもんな
寂しく思ってくれてたんだろうな
この時もうチャッピーは13歳になっていた
そして今月6日久しぶりに実家に帰った時
駅まで迎えに来た親父からこんな事を聞かされた
私が帰る前日の夜親父が家に帰ってくるとチャッピーは立ち上がることも出来ず
自らの意志で排泄も出来ず自分の尿の上に横たわっていたそうだ
慌てて家に帰ってくると
チャッピーはそんな事感じさせない程元気に立って私を迎えてくれた
無理してたんだろう?頑張ったんだろう?
後ろ足が震えてるの見えてたんだぜ?
親父はもう駄目だと思っていたからすごく驚いていた
次の日風呂はもう体が持たないだろうから
汚れた体を濡れタオルで綺麗に拭いてやった
水が嫌いだったからやっぱりヨタヨタ逃げたけど
それでも何か嬉しそうに尻尾振ったよな
食べなくなってた餌も赤ん坊の時みたいに
ドライフードをお湯でふやかして団子作ってやったら美味そうに食ってたな
その日の夜遠くに住む妹が帰ってきた
実に2年振りに家族3人が揃った
お前は本当嬉しそうにしてたよな
夜親父と2人で話してた時親父がふと
「今この時間あいつにとっては夢のような瞬間なんだろうな」と言うのを聞いた時
言いようのない切なさが込みあがってきた
数日後妹も帰り私も帰る時が来た
もうコレが最後かもしれないと思いながらいつものように語りかけながら頭を撫でた
「一人で寂しく死ぬんじゃないよ」「いつもお前のことを思っているよ」他にも色々喋った
驚いたことにチャッピーは私の言葉に一言一言「んっ」「んっ」って返事したよな
しゃっくりでもしてんのかと思ったよ
本当に驚いた
お前とはずっとお喋りばっかしてたもんな
やっぱ分かるんだな
家を出るときお前はまた立ち上がって見送ってくれた
それから10日後親父が仕事から帰ったきた夜
座る事さえ大変だったのに一生懸命起き上がろうとしていたんだそうだ
その夜親父はずっとチャッピーを撫でて寝かしつけて
そして朝眠るように息を引き取っていたんだそうだ
親父から訃報を聞いた時すぐには涙が出てこなかった
放心していたんだと思う
親父も何故かあっけらかんとしていた
あまり普段は撫でてもやらないし親父にとってはそんなもんなのかと思った
そしてその日のうちに荼毘に付した
お昼頃お骨のことを聞こうと電話した時
親父は泣いていた
正直驚いた
今まで親父はあまりチャッピーに愛着が無いものかと思っていたからだ
そういった言動も正直かなり多かったし
撫でているところもほとんど見たことが無かった
ほっとした
チャッピーはしっかり愛されていたんだな
最後の時を一人ですごすことがなくて良かった
寂しい思いをしなくて良かった
天国に行けただろうか
私に拾われて幸せだっただろうか
今はまだ辛い
でもそれより幸福な思い出の方が多い
私は幸せだったよ
先に行って待っててくれ
私もそのうちそちらに行くだろうから
今までありがとう
そしてさようなら
愛しているよチャッピー
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